コラム
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アドミッションポリシー以前に必要な双方向性情報とは何か
—入試制度改革を視野に入れて−
- 入学試験は大学にとって重要な学事です。その理由をもう少し詳しく「大学の立場」から述べると2点に集約できます。
- (1) 大学や学部にとって相応しい人物が選抜できているか
- (2) 公正公明な選抜課程を経ているか
- 前者は、入学試験の科目構成が1つの課題です。また、大学の教育理念や目標或は建学の精神がどれだけ公開されているかと密接に関連しています。一方、後者は入学試験の透明性を教授会や大学が担保し、社会的通念に認められる範囲で説明可能なもので無ければなりません。少なくとも男女共同参画社会の理念に抵触するものや、社会人の入学を拒むものでは説明責任を果たしているとは言えません。医療系学部は、高い確率で将来の職域・職種が定まっています。即ち、学部を選択することは将来の職業を選択することになります。
- 社会では、医学部入学は医師国家試験に合格し医師になることが目標と考えられています。勿論、医学部が自主的・自立的に発展する為に教育・研究職を育成すること自体が目的の一つではあります。基本的には高度職業人に基礎的・基盤的な医学教育を提供するところです。それだけにキャリア形成のプロセスや多種多様な職域が可能な限り可視化されている必要があります。
- 多くの看護学部は教育目的が看護師としての看護実践であることを標榜しています。従って国家試験に合格できる看護学士を育て、多様な看護業務に柔軟に対応できる基礎学力を教授することになります。少子高齢多死社会を迎え、医療提供体制は複雑に多様化しており、在学中に全てを体験することは殆ど不可能です。しかし、キャリア形成が従来通り急性期病院から始まる傾向にあることには、多く課題を抱えています。
- 薬剤部教育が6年間の課程に代わり、薬剤師も毎年増大し続ける膨大な医薬品情報を整理し、医師や看護師と協力して、必要な薬物治療が適正且つ安全に実施されていることを、積極的に推進することが本務と考えられています。主体的な業務として、窓口対応や薬剤管理があり、コミュニケーションスキルと他職種との恊働が積極的に求められています。ライフサイエンスを基盤に創薬される新薬について、多種多様な医学知識が要求される医療の推進者でもあります。
- これらの学部は共通して、国家資格を備えた高度職業人育成が目的であり使命です。従って、法学部や経済学部或は工学部に比べて、卒業時に、学生が「希望する職種」の選択性が極めて乏しいことが分かります。加えて、医学教育モデル・コア・カリキュラム、薬学教育モデル・コア・カリキュラムや看護学教育では、より一層の臨床実践能力を求められています。具体的には「患者さんへの共感」が履修項目に挙げられ、コミュニケーションする『能力』やチーム医療を実践できる『能力』が卒業までに涵養される必要があります。
- 一方、多くの医療系学部では、このような『能力』は職業人としての必要条件なので、高度職業人教育の入り口(入学時)に担保しておきたいと考えています。その理由は、これらの『能力』が初等教育や中等教育で家庭も含めた幅広い教育機会の中で獲得される資質に近いと考えられるからです。少なくとも高等教育だけで培うものではなく、職業人らしく修正を行うことに重きが置かれる課題です。
- 学力判定主体の初等・中等教育の教育指導では、「他人の苦悩に無限の共感をする」、「他人の為に自分の時間を費やす」や「恊働で成果を挙げる」などが教えられ評価されているのでしょうか。また、個別化・孤立化した家庭で「高齢者に接する」、「社会的弱者と共生する」が日常的に行なわれている可能性も低いように思います。医療人として求められるコアな部分(『能力』)は、むしろ『生活者としての感覚』と考えられます。
- 2020年には大学入学試験制度がコペルニクス的転換をすると考えられています。医療系大学や学部がどのような対応が示せるか、その先見性と姿勢は3年後には最初の評価を受けます。