提言
医療系人材育成機関のみなさまへ
提言
医療系人材育成機関のみなさまへ
高度専門職と呼称される医療系人材は、明確に定義されたものはありませんが、医師、歯科医師並びに薬剤師及び看護師と考えられています。医師、歯科医師並びに薬剤師は6年間の修学が義務づけられ、既にモデル・コア・カリキュラムが機能し、学部教育としての基準化は示されています。特に、医学教育においては国際化の波が加わり、新たな世界基準によった教育改革がその端緒にあります。
一方、教育の国際化と共に医師の技量や行動規範も基準化が進められていく方向にあり、新しい専門医認定などもその流れに沿ったものと考えられます。薬剤師は6年間の修学そのものが、欧米での臨床薬剤師養成を意識したものであり、モデル・コア・カリキュラム自体がその主旨で作成されています。看護師は医師、歯科医師、薬剤師同様卒業時に国家試験を受験しますが、学部教育が看護実践を謳った体系であり、多くの時間が臨床実習に割かれています。一方、医療系学部教育も大学教育であり、この様な高度専門職養成も一般的な入学試験を経て、大学教育の範疇で教育を受けるものと考えられています。
そもそも、医師を始めとする医療人は基本的に病に苦しみ悩む人たちに寄り添い、共感し、自らの時間と技術をその人たちに提供する職種であります。言わば偏差値や高度のサイエンス志向のみで選択されるものではなく、他人への思い遣りの上にたつ、十分な知識と向上心が科学的な思考の上に花開くものでしょう。勿論、誘惑に負けない強い克己心や職務を果たす義務感も極めて重要であります。現在の医療人教育は学部教育の時点でそのような医療人に必要な資質形成までもが求められています。本来は、実際の医師の活動や薬剤師の日常、看護師の勤務体制などを充分に理解し、その上で道を定めた優秀な人材が求められていると考えられます。
一方、ライフサイエンスは21世紀の自然科学の牽引者であり、多くの成果が医学・医療の分野で挙げられています。工学や理論物理が50年前まで、事象や物質を対象とした文明の開拓者であった様に、健康長寿や人類の悩みや苦しみからの解放が、科学の大きな目的の一つとなったからです。しかし、先に述べた様な理由から、高度な科学的成果を挙げることのみが医学・医療の目的ではありません。
時あたかも大学入試制度の変更が予定され、アドミッションポリシーや建学の精神に準拠した入学者の選抜が予定されています。大学は多くの情報を発信し中等教育はその意のあるところを鑑み、高大連携や接続と言った枠組みの中で粛々と進められる様にも見受けられます。しかし、本当に必要なことは医師、歯科医師、薬剤師や看護師を中心に、そのキャリア形成と実情を発信する仕組みを作ることが重要と考えられます。人口動態を踏まえた疾病構造の変化、狭まる地球の感染症問題、認知症と身体疾患など伝えるべき課題は多くあります。 また、各学部で進行している教育改革も情報公開が必要です。30年前には病院と診療所だけであった働く場所は、大きく変化をしています。
非営利一般社団法人医学・医療システム研究室では、大学を飛び出し、高度専門職である医療人の実際を広く紹介し、正しい選択を次世代に情報発信したいと考えています。