ご挨拶
ご挨拶
一般社団法人
医学・医療システム研究室
大阪医科大学名誉教授 竹中 洋
一般社団法人医学・医療システム研究室の創設に際して
平成27年5月末に母校大阪医科大学の学長を2期務め退職致しました。卒業後42年、京都府立医科大学、福井医科大学と大阪医科大学で33年余の教員生活を送りました。学長任期中に看護学部の新設や高槻中・高等学校との法人合併並びに学校教育法改訂による学内規定類の見直しを経験しました。医学教育に限れば、我が国で国際的に通じる基準化、標準化が強く臨まれています。大学を辞した今自らが大学人であったことを改めて強く意識しています。
一方で、未曾有のスピードで進行中の「少子超高齢社会」の到来によって、医療提供体制の根本的な改革が求められています。医師にとって、従来の大学病院や大病院で成立していた高度な専門性を追求するキャリア形成だけが求められているのではなく、地域医療に根付いた臨床研究や臨床経験が必要とされだしました。この傾向は、医療全体に大きな影響を示しており、看護師の医行為や薬剤師の医療現場への積極的な参加は喫緊の課題でもあります。
平成27年4月に京都を中心に開催された医学会総会では、医療系学生によるシンポジウムが企画され話題を集めました。学生諸君の意見にも、現在の高度専門技術者としての医療人教育に閉塞感や目的を見いだせない漠然とした心配があるようです。教員も「入学時に医療人としての適正判定が可能か?」や「学生が、医療人教育の前提としての十分な基礎学力を身につけているのか?」学生の質に関わる疑問を現場で緊々と感じています。
このような問題点や課題は何故生じてきたのでしょう、或は具体的な解決方法は見つかるのでしょうか。文部科学省の計画によると平成27年4月の中学一年生が大学受験をする5年後には、大学は直接学力を問うのではなく、アドミッションポリシーやカリキュラムポリシーを中心とした入学者選抜を行うことになります。
その頃には団塊の世代は全員70歳以上となり、「少子超高齢多死社会」が到来しています。日本の医学・医療が未経験ゾーンに突入し、その時代を生き抜く医療人をどう教育して行くのか、残された時間は限られています。有志を募り英知を結集して「医学と医療」に関わる教育や、医療人のキャリア形成への提言が必要と考えています。『医学・医療システム研究室』を市民と医療人が社会的共通資本である医療を熟知し、将来展望を語る場所にしたいと願っています。
一般社団法人医学・医療システム研究室代表理事
竹中 洋(大阪医科大学名誉教授)